ハワイの神聖な葉「ティーリーフ」、赤と緑の物語
前回、いけばなの花材としておなじみの「葉蘭(ハラン)」をご紹介しましたが、今回はその葉蘭によく似た、ハワイを象徴する植物「ティーリーフ(Ti Leaf)」についてお話しします。

ハワイ文化に息づく「神聖な葉」
ハワイ語で「ティー(Ti)」、学名を Cordyline fruticosa と呼ぶこの植物は、ハワイの人々にとって単なる植物以上の存在です。古代より「神聖な力(マナ)が宿る葉」とされ、邪気を払い、幸運を呼び込む象徴として、生活のあらゆる場面で大切にされてきました。
ハワイ好きの方には、フラのスカート(パウ)や、首にかけるティーリーフレイなどでお馴染みかもしれませんね。

また、ハワイの学校では文化継承の一環として、子供たちが実際にティーリーフを使って伝統料理を学ぶ機会もあります。お肉や魚を葉で包んで蒸し上げる「ラウラウ」や、地中のオーブン(イム)で焼く際の包み材など、ティーリーフはハワイの食文化にも欠かせない存在です。

子供たちが一生懸命作ったハワイの伝統料理、ラウラウ。地中オーブン「イム」でじっくりと蒸し焼きにされたティーリーフの香りが、写真からも伝わってくるようです。
「緑」と「赤」― 知られざる使い分け
儀式や料理に使われるティーリーフといえば、鮮やかな「緑色」をイメージするのが一般的です。しかし、ハワイの公園や街を歩いていると、深いワインレッドのような「赤色」の葉を見かけることはありませんか?
実は、これも同じティーリーフで「レッド・ティー(Red Ti)」と呼ばれています。

「季節や土壌で色が変わるの?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。アジサイや紅葉とは違い、これらは最初から「緑の品種」と「赤の品種」という別々の種類なのです。
- 緑色のティー: 葉が柔らかくしなやか。熱に強いため、料理や衣装、神聖な儀式に。
- 赤色のティー: 観賞用として人気。葉が硬く、色が移ってしまうため、料理には不向き。
自然の偶然を、人間が「デザイン」した美しさ
もともと大昔の野生のティーリーフは、基本的には緑色でした。 しかし、自然界でごく稀に起こる突然変異によって、赤い筋が入った珍しい個体が生まれることがあります。それを見つけたポリネシアの人々や近代の園芸家たちが、「これは美しい!」と大切に育て、挿し木や交配を繰り返してきました。
つまり、いま私たちが目にする色鮮やかなバリエーションは、「自然が作った偶然」を、人間が長い年月をかけて「デザイン」として完成させたものなのです。
一方で、伝統儀式に使われる「緑のティー」は、人間が手を加える前の原始的な姿に近い、いわば「野生の生命力」を強く残したタイプと言えるでしょう。

歴史に思いを馳せて

写真のように、青々とした緑の中にスッと立つ赤い葉は、まさに「紅一点」。庭園に彩りを添えるその姿には、美しさを追い求めた先人たちの情熱が詰まっています。
もしハワイの公園や庭先でこの赤い葉を見かけたら、ポリネシアの航海者たちや園芸家たちが紡いできた長い歴史に、少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
